今月のベアフット

6月のこどもたち

幼稚園の園庭には森の緑やいろいろな草花が繁茂し、花を咲かせては散ってを繰り返しています。
花壇は見事に理想の雑草園になり、去年はなかった場所に突然きれいな花が咲いたり、今年はえらく勢いのよい草があたり一面を占拠したりと、今年の植物たちの攻防も見ものとなっています。
福音館書店の「雑草のくらしーあき地の五年間ー」(甲斐信枝 作)の絵本にもあるように、自然の中で雑草が種を温存し続け、互いに領地を牽制し合って意思のある生き物のように命の物語を紡ぎ出している様を思い起こさせます。
植物も命輝く時をむかえているのですね。

6月といいますと、「緑」、「雨」、「カタツムリ」、それに「アジサイ」とステレオタイプでイメージが浮かんできます。
今日はこのうちのアジサイについてお話したいと思います。
アジサイは花のつき方や花びらの形などがそれぞれ違ういろいろな種類がありますが、それらが園庭の端々で、厚い葉を茂らせ、鮮やかな青やピンクの花をいくつもつけて長い間楽しませてくれます。
カタツムリやダンゴムシ、テントウムシなどの貴重なお宿にもなります。
また秋になってもドライフラワーとなって風情ある佇まいで冬の間も枝にとどまり続けます。
そんな身近かな花ですが、江戸時代、日本固有の花としてオランダに紹介したのはシーボルトだったといわれています。
愛妻の名前をつけた「オタケグサ」としてオランダで栽培され改良されて今世界的な花になりました。日本にもハナアジサイという品種になって逆輸入されています。
でもオランダの一角には日本からの原種がまだ大切に植えられて花をつけているのだそうです。
見てみたいですよね。
そう考えますと、ひとつの小さな植物にまつわる歴史や人の思いなどが壮大な物語となってイメージをより一層深いものにしていきます。
生きるものたちの力強い生命の継承を感じます。
子どもたちにそんな話はむずかしいかもしれませんが、「その時」になれば花が咲くこと、その花の美しいこと、そして花が終わると種を残し、それがまた生き返って花をつけるといった自然の節理を驚きと喜びのまなざしをもって気にとめてもらえたらうれしいことです。
花を美しいと愛でる目と心は生涯を通して豊かなものを育みます。せめて、子どもたちが大好きな花の名前をひとつでも覚えて卒園していってほしいと思っています。

6月はおとうさんのことをたくさん思いながら過ごします。
カーネーションの花からは、おかあさんの愛をいっぱい感じた子どもたち。
おとうさんの愛はどんなイメージで深められていくのでしょうか。
おとうさんのことをいっぱい思う中で、やさしい思いやことばを紡いでいくと同時に、自分がおとうさんやおかあさんからこんなに愛されているのだということをうれしく感じ取り、心にいっぱい幸せ感をふくらませていってほしいと思います。

副園長