からだのなかでドゥンドゥンドゥン

木坂 涼 さく
あべ弘士 え

福音館書店

 

 

きいてごらん おとがする

からだのなかで ドゥン ドゥン

ドゥン ドゥン おとがする


みみを ぴったり むねに つけてね

すると ほら きこえてくる

ドゥン ドゥン ドゥン ドゥン


いぬのコロも トゥックン トゥックン

ねこのミーも ウックン ウックン

ひなたぼっこのとかげも

とんでいくとりも

波のうえのラッコも

やまのおくのくまも

もりのはずれのきつねたちもつちのなかのもぐらも

海のまんなかのくじらだって


きいてごらん おとがする

からだのなかでドゥン ドゥン ドゥン

いのちのおとが ドゥン ドゥン ドゥン


* この絵本は2002年4月に月刊絵本「ちいさなかがくのとも」として発行されたもので、2008年12月31日「幼児絵本ふしぎなたねシリーズ」として発行されました。

この絵本を見た時、本当にシンプルに「生きているってこういうことなんだよな」と納得しました。

生きているっていうことは、心臓が動き、血液がドッドッと体中に運ばれ動き回っていること。

「生きる」「生きている」ということは、ことばでどのように伝えても伝えきれずに抽象的な説明になりがちなのですが、小さい子どもにとって、おかあさんの心臓の音を聴く、おとうさんの心臓の音を聴く、そして、自分も聴いてもらうと「同じ音がしているよ」という具体的に行為によって「自分が生きている」そして「みんな生きている」ということがわかってくるのではないかと思います。

「自分が生きている」ことを実態としてつかめること、そして自分と同じように「みんな生きている」ということが分かったとき、子どもは自分と他者との関係をきちんと把握できるのではないかと思います。

犬も猫もとかげも鳥もラッコも、熊も狐もモグラもくじらもみんな命の音がする。

この生き物たちの描写では、人間の介在がなく、動物同士が互いに生きていることを確かめ合っているような場面が印象的です。

ともすると,動物の命は人間が左右できるかのように思いがちですが、そうではなく、「それぞれがみんな命をいただいて生きているのだよ。大切な命、大切な一人ひとり(1匹1ぴき)なのだよ。」ということをメッセージとして受け取れます。 

ありとあらゆる場所で、あらゆる生き方をしているものたちは、みんな命をいただいて、その命を大切にいきているんだということが,幼い子どもたちの心に「ふしぎなたね」としてまかれたならば、これからの宇宙船地球号はもっとやさしく豊かな星になっていくことでしよう。


幼いこどもだけではなく、今一番人間としての分別と他との共存をとりもどさなければならない大人たちに、自分が生かされていること、他者も同じ尊い命を生きていること、生き物すべてが「生」を分かち合って生きているのだということを、危機感をもってぜひ考えて欲しい。私はそんなメッセージをこの絵本から読み取りました。

2020年10月28日