パンプキン・ムーンシャイン


ターシャ・テューダー 作
ないとう りえこ 訳
メディアファクトリー

 

今日はハロウィンの日。

アンはおじいちゃまの畑に、一番立派で大きいカボチャを探しにいきました。

丘の上の畑まで息をはあはあはずませて登っていきます。

畑につくとぐるっと見まわします。

あれがいい!

大きくて立派なかぼちゃが見つかりました。

でも、重たくてどうやって運んだらいいんでしょう。

アンは転がすことにしました。

丘の端まで転がしていくとあとは下り坂です。

かぼちゃは ぼん ぼん ほぼーん と転がりはじめました。

下の動物農場の動物たちをびっくりさせたり怒らせたりしながらかぼちゃはどんどん転がっていきます。ボン ボン ボボーン。

アンは急いでそのあとをおいかけます。

家の壁にぶつかってやっとかぼちゃは止まりました。

おじいちゃまはかぼちゃの頭をスパット切ってくれました。

アンは種やスジをきれいに取り除きます。

おじいちゃまは、かぼちゃに穴をあけて目と鼻と大きな口をつくります。

暗くなるのを待って、かぼちゃのなかにろうそくの灯を入れます。

それを門の上に置いて、二人はいそいで茂みに隠れます。

そして道を通る人や動物が目と口を燃えるように赤く、大きくあけたパンプキン・ムーンシャインを見て道を通る人や動物がびっくりするのを楽しみました。



*素朴な、しかし絵本のおもしろさの原型のようなこの絵本は、1938年、ターシャ・テゥーダーが23歳の時に初めて書いた絵本です。

1915年生まれのターシャさんは、90冊を超える絵本を描きつづけ、たくましい生活者として生き、つい先日、6月18日に92歳で生涯を閉じました。

子どもや自然、動物たち、そして生活のひとつひとつを楽しみ、こよなく愛し続けた方だったように思います。

アメリカの人気作家としてたくさんの絵本や挿絵を描き何世代にもわたる子どもたちに夢とユーモアと、よき時代の家庭、家族、自然を与えたことを改めて感じます。

1830年代が一番好きといって、住む家も生活様式も19世紀のままを固持し続けた自由人でもある彼女は、花を愛し広大な敷地に思いのままのガーデニングを楽しみ、蜜蝋のローソク、織物、人形作り、染物、洋服、とすべてのものりを自分の手で作り上げていました。

彼女は4人の子どもを育てながら、その生活をも輝くような絵本にしてきました。

この「パンプキンムーンシャイン」もそうですが、自分の体験した幸せな子ども時代や「ベッキーのたんじょうび」など子どもたちとの楽しい生活の実話など、一貫して古きよき時代の家族のやさしさ、あたたかさを描いています。

彼女を一躍有名にした絵本は1976年に冨山房から出版された「コーギービルのむらまつり」でしょう。

日本の子どもたちにも大人気になりました。

現在はメディアファクトリーから出版されています。

その他、バーモント州にあるターシャさんの住まいのコーギーコテージでの生活を撮った美しい写真集なども出版されて、たくさんの方に愛読されています。

さまざまにご苦労はされたこととは思いますが、最後まで、自然を愛し、人を愛し、

生活を愛して、お幸せな人生をまっとうされたのではなかったかと思います。

そして、彼女の生き方や思いはこれからも絵本を通して、またその手から紡ぎだされたたくさんの作品を通してたくさんの人のなかに生き続けることと思います。

2020年11月06日