まんげつダンス!
パット・ハッチンス さく・え
なかがわ ちひろ 訳
福音館書店
満月の晩、ここは家畜小屋。
羊と豚と馬は、月を見ながら一晩中でも踊りたくなりました。
眠っている子どもたちを起こさないように、床にわらを敷きました。
これなら、とんでもはねても足踏みしても大丈夫。
まずは馬のぱかぱかダンスから。
ぱかぱかぱんぱん ぱんぱかぱん。
馬はわらを蹴散らし、小石の床をたたきます。火花がでてもおかまいなし。
わらに火がつき、さあ大変。
馬は水をかけて火を消しました。
でも馬はもうフラフラ、「お先に失礼、もう寝ます。」
次はひつじのぽよよんダンス。
毛糸玉のように軽やかにぽよよんと張りきって踊っていると、あら、張り切りすぎて
小屋のはりにひっかかってしまいました。
豚の敷いてくれたわらの山にようやく落ちた羊は、もうへとへと。
『お先に失礼』と寝床の中に。
最後に残った豚は,足取り軽くらたたた、らたたたた。
つるりとすべって,水桶にざぶーん。
あらまあ何てこと。あぁ疲れた。眠りましょう。
馬と羊と豚が眠ると・・・・。
こっそり起きてきたこどもたち。
今度はぼくたちの番。おかあさん、ゆっくり寝ていいからね。
こどもたちは踊って踊って一晩中踊りました。
ぱかぱか ぽよよん らたたたた。
こどもたちは朝まで踊ってこっそり戻ってくると、おかあさんたちと一緒に眠りました。
2008年4月末に発行された新本です。
作者のパット・ハッチンスは、息の長い絵本作家で「ロージーのおさんぽ」「ティッチ」「ヒギンスさんのとけい」など2世代にわたって読まれている本をたくさん描いています。
それと同時に、この数年、毎年のように新本を出していて、色彩の美しい、そしてやさしいユーモアのあるストーリーに魅了させてもらっています。
今回も彼女の真骨頂であるのどかな農場が舞台です。
2006年には「かえりみちをわすれないで」2007年には「がたごとばんたん」が発行されていますが,今回の「まんげつダンス!」も同じ舞台のお話のように思います。
そして、これは1975年に発行した「ロージーのおさんぽ」(偕成社)の舞台がそのまま引き継がれているように感じます。
彼女の本は画法を時には大きく変えて、これが同じ作家が描いた本かと確かめてしまうようなものもありますが、その根底には人が自然や動物たちと共にやさしく生きていきたいというテーマが一貫して流れているように思います。
今回の愉快な「まんげつダンス!」。
鮮やかな色彩、ユーモラスな動物たちの動きの表現、そして、傑作な話の展開。と、どれを見ても楽しい本です。
本当に楽しい!本です。