14ひきのおつきみ


いわむらかずお 文・画

童心社

 

森に住むのねずみの家族。
おとうさん おかあさん おじいさん おばあさん そして、きょうだい10ぴきの
14ひき家族。
今日は高い木の上にロープやはしごで のぼって のぼっていきます。
みんなのぼったね。
木の上は 風が通り抜けて 葉っぱがさらさらなっている。
さぁ、木の枝 切って ひもでしばって  お月見台ができた。
ずっと ずっと 遠くが見える。
真っ赤な夕日、山が 空が みんな燃えてる。
だんだん夜がひろがってきた。
おだんご、栗の実、どんぐりを飾って、ほら もうすぐだよ。
でた でた おつきさんがでた。
おつきさん こんばんは。
おつきさんを見ながらごちそう食べよ。
おつきさん やさしい光で14ひきを見てた。


◎この絵本は、いわむら かずおさんの14ひきシリーズのなかの一冊です。
のねずみの14匹の家族のものがたりは「14ひきのひっこし」から始まって、すでに
11冊がシリーズになっています。
のねずみの兄弟はみんな名前がついていていたずらっこもいれば、甘えん坊やしっかりもののおにいさんもいるといったにぎやかな家族です。
子どもたちはもう のねずみたちの名前もしっかりと覚えていて、自分に似ているのねずみの子に自己投影をしながら、共感性をもって今度はどんなお話かなと楽しみにしています。
この家族は、栃木県馬頭町にある「いわむらかずお絵本の丘美術館」のある森に住んでます。
そこを訪ねると、そこここに絵本で見た風景やおなじみの場所に出会うことができます。
今年の夏7年ぶりに絵本の丘美術館に行ってきました。
前回行った時と同じように林があり、池や田んぼがあり 牛舎があって牛がこっちを見て挨拶をしてくれ 畑にはトウモロコシが実りトマトが熟れていました。
少し違って感じたのは、小さな生き物にあまり行き会えないなということでした。
全体に乾燥している感じがして、湿気のなかで漂っているあの生き物の匂いや気配があまりなかったように思います。
それも異常気象のなせる業でしょうか。
しかし、自然がそのままに注意深く保たれ、そこに暮らす農家の方の生活の匂いもなつかしく、足元に咲いている小さな野の花にも喜びを与えられました。
いわむらさんは、この場所をそのまま丹念にデッサンし、そこに生きているのねずみやリスやカエルなどを主人公にして、この大きな自然のなかに営まれている生き物の生活をやさしいまなざしで絵本に書きつづけていらっしゃいます。
そして、その画面から、私たちに自然の香りをいっぱい送りつづけてくださいます。
この14匹ののねずみの絵本を通して、人々が、自然のなかで平和に仲良く暮らすことのあたたかさをいわむらさんからメッセージとして届けていただいているように感じます。

2020年11月20日