サンタさんからきたてがみ


たんのゆきこ さく

垂石眞子 え

 

福音館書店

 

クリスマスの前の日。
雪が降り積もった森のなかを、ねずみの郵便やさんがカバンに手紙をいっぱい詰めて駆けています。
おっと、雪にすべってころんでしまいました。
手紙はカバンから飛び出して、散り散りバラバラ。
慌てて拾い集めましたが、最後の手紙の宛名が雪にぬれてにじんで見えなくなっていました。
「どうしよう」。
ねずみはしょんぼり。
でも手紙を待っている森の動物たちに手紙を届けなければ。
いつも元気なねずみくんが今日はしょんぼり、とぼとぼ 手紙を配ります。
そんなねずみくんを心配して動物たちが集まってきました。
ねずみくんが、宛名のわからなくなった手紙を見せました。
「その手紙、だれからきたの?」とうさぎさん。
裏を返すと…・・、それはサンタさんからの手紙でした。
サンタさんから手紙をもらえる人なんて、どんな人なのでしょう。
動物たちはみんな自分に来た手紙だといいました。
けれど、よくよくみんなで見てみると、ねずみさんのしっぽが描いてあることに気づきました。
「これはねずみさんへのお手紙だよ。」
早速、開いてみると、それはサンタさんがプレゼントを配るお手伝いをして欲しいというお願いだったのです。
大変、もう時間がありません。
くまさんはねずみさんをコートのポケットに入れると全速力で走りだしました。
動物たちもみんなあとについて走ります。
サンタさんとの約束の森一番の大きなモミの木につくと、そのモミの木はたくさんの光で飾られ輝いていました。そして、その下にはサンタさんが立っているのが見えました。
さぁ、みんなソリに乗せてもらって サンタさんのお手伝いに出発です。
ねずみさんは上手に案内ができましたって。


子どもたちにとってサンタクロースの存在は特別です。
サンタクロースはいつも自分を見ていてくれて、自分が一番欲しいものを届けてくれるという信頼厚い存在であり、子どもにとっては「目に見えないけれども必ず在るもの」を感じ取ることのできる存在です。
人が幼いときに、サンタクロースがいることを信じられるか、信じられないかは人生を通して、大きな分岐点なように思います。
人が自分を超えた大きな存在によって守られ愛されているということを生涯信じて幸せを創り出す人になるか、目に見える物しか見ようとしない人になるかは、この一点にかかっているのではないかと思うのです。
この絵本はサンタさんが子どもにとってどんな存在なのかをうまく言い当てているように思います。
すぐそばにいるようで、でも、とても偉大な人のようで、何でも受け入れてくれそうで、一人ひとりをとても大切にしてくれる。
そんな存在感をもったサンタさんとそれを素朴に慕う動物たち(子どもたち)。
大人になるとそんなことは微塵もなかったかのようにして気難しい顔で現実を嘆き、あれがいけない、これが足りないと愚痴をこぼしてしまいがちですが、このクリスマスの時、もう一度、素直な子ども心にもどって、見えないものに身をゆだねる心地よさを味わいたいと思います。
そして、子どものサンタを信じようとする気持を躓かせない大人でいたいと思います。

2020年12月07日