おおきなかぶ


ロシア民話/A・トルストイ再話

内田莉莎子 訳

佐藤忠良 画

福音館書店

 

おじいさんの育てたかぶが甘く大きくできました。
おじいさんは「うんとこしょ どっこいしょ」と力いっぱいかぶを引っ張りましたがしましたが、かぶは抜けません。
おじいさんはおばあさんを呼んできました。
おじいさんがかぶを引っ張って、おばあさんがおじいさんを引っ張って「うんとこしょ どっこいしょ」と引っ張りましたがそれでもかぶはぬけません。
おばあさんは、孫むすめを連れてきました。
力いっぱいひっぱってもかぶはまだまだ抜けません。
まごは犬を連れてきました。
それでもかぶは抜けません。
犬は猫を呼んできました。
それでもかぶは抜けません。
猫はねずみを呼んできました。
「うんとこしょ どっこいしょ」
ようやくかぶはぬけました。


みんな知っているお話です。
大きく大きく育ったかぶがいざ収穫ということになった時、とてつもなく重く、大地にしっかり根を下ろしていてなかなか抜けません。
おじいさんは、おばあさんを呼んできました。
おじいさんは、しっかりとかぶをつかんで、そのおじいさんをおばあさんが引っ張って力いっぱい引っ張りましたがそれでもびくともしません。
そこで孫を連れてきて、かぶをひっぱるおじいさんをおばあさんがひっぱり、そのおばあさんを孫がひっぱり、それでもかぶはぬけません。
それじゃあ、と今度は犬を呼んできます。
つぎは犬が猫を呼んできてひっぱりますがそれでもかぶはぬけません。
最後に猫がねずみを呼んできてみんなでひっぱると、ようやく大きなかぶがぬけました。
というシンプルな繰り返しのお話であります。
しかし、あれほど力の限りにぬこうとしてもぬけなかったかぶが、最後に小さなねずみの登場で均衡がくずれ、事態が一転するというおもしろさ。
飽きもせず繰り返される「うんとこしょ どっこいしょ」。
これがこどもたちにはたまらないんでしょうね。
考えてみますと、こどもってこうやってすべてのことを繰り返しながらものを理解したり、喜びを重ねていったり、勤勉性を養ったりしているのですよね。
絵本に繰り返しが多いというのはやはりこどもの心の発達にうまくフィットしているのだと思います。
大人は、細かい同じような繰り返しは極力避けて出来るだけ簡単に合理的にと考えがちですが、こどもは一つ一つを丁寧に繰り返すなかで納得していくのではないでしょうか。
大人はそんな子どもの心情や育ちに添っていかなければならないのではないかとこの物語を読むたびに考えさせられます。

2020年12月14日