おおきなクマさんとちいさなヤマネくん あめのもりのおくりもの

ふくざわ ゆみこ さく
福音館書店
森に嵐がきています。
雷が嫌いなクマくんが、おうちのなかでふとんをかぶって震えていますと
元気な元気なヤマネくんがやってきました。
そして、なないろだに咲いたアジサイの花を見に行こうと誘うのです。
こんな雨のなかを?とクマくんが困っていると大きな雷の音!
クマくんはもうだめ。キャンセルです。
するとヤマネくんは「じゃあ ぼくがアジサイの花を持ってきてあげる」といったかと思うと、クマくんの止める声も聞こえないで外に飛び出していってしまいました。
心配でたまらないクマくん。
でも外に出たら雷がおちてくるかもしれない。
そんなクマくんの家に水が入り込んできました。
あわてて外に出て見ると、なないろ川があふれて洪水です。
川上の方から、木の枝が木の葉と一緒にアジサイの花が流れてきました。
ヤマネくんが危ない!
クマくんは雷の音が鳴り響くなか、なないろだにに向かってすごい勢いで駆けつけました。
すると「たすけてー」という叫び声、ヤマネくんの声です。
アジサイの花にヤマネくんがしがみついています。
クマくんが「今、助けにいくからね」と叫んだとたん、ヤマネくんはアジサイの茎が折れて、川の流れにのみこまれてしまいました。
クマくんは急いで川に飛び込むと、ヤマネくんを拾い上げました。
「ごめんね。アジサイの花をクマくんに見せてあげたかったんだ」
とヤマネくん。
「ありがとね」「ありがとね」
2人は顔を見合わせてほほえみました。
おおきなクマくんとちいさなヤマネくんシリーズの4冊目が出来上がりました。
この時期にぴったりの 季節感あふれる物語です。
おおきなクマくんとちいさなヤマネくんのお話も4冊目になると、もう他人ごととは思えず、なんだか身内のような親しさを感じてしまいます。
大きなダイナミックな絵は、大きいものと小さいもの、横と縦というふうにさまざまな視角から描かれて動きがありますし、ことばもその絵とお互いに邪魔しあうことなくスムーズに溶け合っています。
このシリーズの本はどれも、ことばが素直でなめらかなので、子どもたちに語る時にとても読みやすく、また、ことばが子どもたちのなかに入っていっているなと実感します。
今回の2人の対比も意表をついていてほほえましく、スピード感のある展開の最後はほのぼのとしたいつもの2人のあたたかさに落ち着いてホッと安心感と満足を与えてくれます。