ねずみのおよめさん


日本の昔話 小野 かおる 再話/画

福音館書店

 

昔のお話。
あるところにねずみのおとうさんとおかあさんに大事に育てられた、きりょうよしのねずみのむすめがいました。
ねずみの夫婦は、むすめのお婿さんには世界一えらい方になってもらおうと考えました。そして、世界中を照らしているお日様が一番偉い方だと思って娘を連れお日様に頼みにでかけて行きました。
するとお日様は、「わたしより雲さんの方が偉い。だってわたしをすっぽり隠してしまうもの。」と答えました。
それではと雲さんのところに出かけて婿さんになってくれと頼むと、雲さんは残念そうに「風さんはもっと偉い、わしらを吹き飛ばしてしまうよ。」と答えました。
今度は風さんのところに行くと、「世界で一番偉いのはわたしではなくて壁さん」と言われます。
そこで壁さんに頼みに行くと、壁さんは「わしらはねずみさんにかじられては穴だらけになってしまう。世界で一番偉いのは、ねずみさん、あなたたちですよ。」といいました。
ねずみの夫婦は「世界で一番偉いのはねずみだったのか。」と大喜び。
そこでねずみの娘は隣町の若者ねずみのところにお嫁入りをしましたって。


このお話はきっとお父様やお母様のだれもがきいたことのある昔話だと思います。
シンプルでいて、奇想天外のストーリー。スケールの大きさも子どもたちの想像の世界を広げます。
そして、主人公は小さなねずみたち。
本当に昔話は柔軟な空想力で構成され、縦横無尽に展開します。
似たような昔話は他にも「世界一の話」などもあり、世の中の奥義をユーモアをこめて語り伝えています。
このねずみが尋ねた世界一偉い方は実は自分たちねずみだったというお話の展開は、いろいろな意味を含んだ教訓話にもなります。
それはさておき、このお話はたくさんの絵本となって出版され、多少のニュアンスの違いもありますが今回紹介いたしました「ねずみのおよめさん」は、1988年1月1日に「こどものとも年中向き」として発刊された月刊誌でした。
それがこのたび、2006年1月1日に18年ぶりに「こどものとも年中向き」として再発刊されたといういわくつきの絵本です。
小野かおるさんの画の素朴さとモダンさ、色使いの美しさは子どもの心にきっと残りつづけることでしょう。かつて読んでもらった子どもたちがそうであったように。
また、語り口のやわらかさ、やさしさは本当に子どもにそのまま話しかけているようです。
お正月、こどもをひざに入れて読んであげたら、きっと気持ちよい幸せな時空が広がっていくことでしょう。
福音館書店から他にハードブックで「ねずみのよめいり」(岩崎 京子・文、二俣 英五郎・画)が出版されています。

2021年01月12日