さむがりやのサンタ



レイモンド・ブリッグズ 作・絵

すがわら ひろくに 訳

福音館書店

 

アドベントに入った日でした。
年長組のMさんと話している時、「クリスマスの絵本で一番好きなのはどれ?」とききますと、すかさず「さむがりやのサンタ」と答えました。
「本当にそうね、私も大好き」というと、「あれ、おもしろいよね」とMさん。
そして、思わず顔を合わせてにやっと笑ってしまいました。
そうなんです。大人も子どももとっても楽しい絵本なのです。
サンタクロースというのはだれでも知っていますが、いざその実態はといいますとなかなか想像がつきません。
この本は、あったかい南の島でのんびりとしていたいさむがりやのサンタが、クリスマスイブの夜、お弁当を持ってトナカイのそりにのりクリスマスプレゼントを子どもたちに渡しにでかけるお話です。
サンタは遠い国までそりを走らせ、苦手な煙突をいくつもくぐり、階段をいくつものぼっておりて、一晩中こどもの家をたずねます。
ようやくプレゼントを届け終わり、やっと家にもどったサンタは、お風呂に入り、ご馳走を作り、ビールを飲んでゆっくりします。
そして、1人でゆっくりとクリスマスのお祝いをするのです。
この楽しい絵本を紹介するのに時間がかかったのは、この絵本がコマ毎に場面がどんどん変わっていって、「読んであげる」のには少しむずかしいかなと思っていたからです。
しかし、Mさんがいうように、本当におもしろくて楽しくて、一度読んだら忘れられない本として、たくさんの子どもたちに(かつての子どもたちにも)支持されています。
絵の楽しさ、色の鮮やかさも印象にいつまでも残ります。
そして、何よりもサンタさんが、隣のおじいさんのように飲んだり、食べたり、お風呂に入ったり、愚痴をいったりするごく身近かに生活している人として描かれていて、それを読者は眼差しで見るだけですべてわかってしまうというところがこの本の魅力であり、子どものサンタさんへの夢がより膨らんでいくという大きなおまけがあるように思います。
子どもがサンタさんなんかいないと思うか、サンタさんはきっといるという思いを持ち続けるかはその子の人生を左右するような出来事だと思います。
目には見えないものを信じるということ、そして、きっと誰かが自分のことを見ていてふさわしい贈り物を持って来てくれると確信できることは、これからの人生のなかで自分を大切にし、人を信頼し、よいものを創り出す基となるでしょう。
そして、いつか、自分もサンタさんになることのできる人になるでしょう。

2021年01月15日