めざめのもりのいちだいじ

ふくざわ ゆみこ さく
福音館書店
冬の間、ずっと眠っていたヤマネくんが目をさましました。
春だ!春のにおいだ!とゆきどけの森をかけまわっていると、雑木林のはずれの崖からブーン、ブブーンとにぎやかな音がきこえてきました。
それはミツバチさんのならす羽の音。何かあわてているようです。
だって、雪解けの水で崖が崩れ始めてそこの枯れ木に作ったミツバチさんの家が傾いて今にも崖の下に落ちそうなんですもの。巣の中には大切な卵や赤ちゃんもいるのです。
ヤマネくんは、「クマくんだったら何とかしてもらえるぞ」と森一番の力持ちのクマくんのところにかけつけました。
でも、クマくんはまだぐっすり眠っています。
どうしたって起きてくれません。
クマくんに起きてもらうには、何か春の印を持ってくるしかなさそうです。
ヤマネくんは、急いで春を捜しに飛び出しました。
雪の割れ目に雪解け水が流れる川が見えます。
丘にはふきのとうのいいにおいがしていました。
でもどちらもクマくんのところにはもっていかれません。
川を下って池に来ると、カエルくんがいました。
「ヤマネくん、みんなそろってどうしたの?」その言葉にびっくりして振り向くと、岩陰からモグラくんに,トンビくん、ウサギさんにアナグマくん、そしてキツネさんが顔を出しました。
忙しそうに走りまわっているヤマネくんのあとを「どうしたんだろう」とそっとついてきていたのでした。
これだけ集まれば何とかなるかもしれないと、ヤマネくんはみんなを連れて
崖の上に急ぎました。
つたのロープでミツバチさんの家をひっぱります。
ところが枯れ木の家はびくともしません。
やっぱりクマくんに登場してもらわなくてはならないようです。
みんなでクマくんを呼んでおこします。
「ミツバチさんが大変!クマくん起きて!ミツバチさんが、ミツバチ,ミツ…」
「八チミツ?ハチミツがたくさんだって?」クマくんがむっくり起き上がりました。
「ハチミツじゃなくてミツバチさんのおうちが大変なの。」
「ミツバチさんの家がこわれたらハチミツをたべられなくなっちゃう」とクマくんはいちもくさんに崖の上に走ります。
そして、軽々とミツバチさんの家を持ち上げると、ミツバチさんが案内する雪野原に穴を掘って枯れ木のお家を立てました。
やがて、すこしずつ暖かくなって雪が解けると、そこは、当たり一面、れんげの花畑になったのです。
ミツバチさんは森のみんなにれんげから集めたおいしいハチミツをプレゼントしました。
クマくんもヤマネくんも「春の味だね」といいながらおいしそうに食べたんですって。
2005年1月に発行された おおきなクマくんとちいさなヤマネくん のシリーズ3作目です。
今回も、ダイナミックな絵と動物たちのやさしさがたっぷり詰まったことばであたたかい世界を描いてくれています。
森に春がやってくる、という うきうきするような思いを、ことばや絵を通して音をきかせ、香りを漂わせ、日の光の明るさを感じさせながら膨らませていきます。
そして、今回も「わぁ!」という展開も用意されている楽しいうれしい絵本です。