あらいぐまとねずみたち

大友康夫 作・絵
福音館書店
森の小川の岸辺にあらいぐまの家族が住んでいました。
きれい好きのあらいぐまたちが、食器を洗いながら、「明日はじゃがいも料理にしようね」と話していました。
洗い物をすませて、お家に帰ると、大事なおいもの袋がなくなっていて、お豆もちらかっています。びっくりしたあらいぐまたちは、豆のあとを追っていくと、草原でねずみたちが大勢で遊んでいるところに出ました。
まぁ、どうでしょう。そこには、こどものあらいぐまのおもちゃや、なくなったおいもや、お父さんのメガネもあります。
あらいぐまたちは,はらをたてて、ねずみを捕まえました。
そして、全部返すから、と約束をさせますが、「全部返したら食べるものがみんな なくなっちゃう」と、子どものねずみの泣声がきこえました。
あらいぐまたちは、困ってしまってしばらく考えてからいいことを思いつきました。
ねずみむらに、畑を作る事でした。
畑には、じゃがいもを植えました。
すると。こんどは「わたしたちも、あらいぐまさんのような立派な家が欲しいのですが」といわれて、家作りが始まりました。立派なお家もでき、ねずみたちは大喜び。
それから何日も何日もたったある晩のこと。
あらいぐまのお家に向かって、ねずみたちの行列が続きます。
畑でできた じゃがいもを抱えて。
この絵本は、リズミカルなことばと、ユーモラスな絵が一体化して、いつまでも印象に残る楽しい絵本です。
泥棒のいたずらねずみに対して、あらいぐまたちが、怒るだけでなく、どうしたら泥棒をしなくてもいられるようになるかというところまで考え、知恵を貸し、ねずみたちと力を合わせて、一緒に新しい生活を作り出していくという過程が、読む者をホッとさせたり、夢をもたせたり、平和にしてくれます。
ねずみたちも、恩返しだといいながら、自分の畑にできたじゃがいもをあらいぐまの家に運んでいくラストのページを読みながら、共に生きる ということの喜びがぱぁっと心に広がり、平和を創り出す喜びを伝えてくれます。
今、私たちの世界は、互いに自分の利益ばかりに執着して自分さえよければいい というような風潮の中で、共に幸せになる知恵を持とうとはしません。
みんなが、相手の幸せのためにほんの少しだけでも考えられれば、みんなが生きていることの素晴らしさを感じることができるのではないでしょうか。
平和を創り出すということは、すぐ身近なことに心をかける、ということから始まるのではないかと思うのです。