14ひきのあさごはん


いわむら かずお

童心社

 

おとうさん おかあさん 

おじいさん おばあさん

 そして きょうだい 10ぴき。

     ぼくらは みんなで

        14ひき かぞく。

もりのあさ。

14匹の のねずみの家にも 朝がやってきました。

おはよう おはよう。

冷たい水で顔を洗って いい気持。

さぁ、のいちごつみにでかけよう。

丸木橋をわたって、虫たちにごあいさつをして、きいちごの木についた。

かごいっぱい 摘んだきいちごをかついで おうちに帰ります。


おうちでは、どんぐりの粉で作ったパンがふっくらと焼けています。

きのこも入って特別おいしいおとうさんのスープも出来上がり。

さぁ、みんなそろってあさごはん。
パンとスープと、のいちごと、ジュースに ジャム。

みんなで作ったあさごはん。

14ひきの 新しい一日の始まり。

 

 

いわむら かずおさんの14ひきシリーズも「14ひきのアトリエから」(創作の秘密、家族や自然について、スケッチを交えて語ったもの)を入れて14冊になっています。
最初に創られた「14ひきのひっこし」が1983年ですから、このシリーズのファンは2代にわたっているのではないでしょうか。
森に棲むのねずみの大家族のおはなしは,どれもみんなあたたかく、生活的です。
森の自然の豊かさ、美しさも画面いっぱいにひろがった感性豊かな そして 確かな筆で描かれていて、読む者をぐいぐいと自然の世界に引き込み、魅了します。
また、短い文と、大きな絵が、読む者にちょうどいい間を与えてくれて、1ページ1ページが本当にいとおしく宝のようにしみこんでいきます。
以前、いわむらさんの絵本美術館にうかがった時、そのロケーションはまさにこの絵本の中の自然そのものでした。
たんぼや畑もあって,採れたての野菜をおいしくいただいたことを思い出します。
その時、いわむらさんがおっしゃっていたのですが、この絵本が大好きだというファンの親子がここにやって来たのですが、森に一歩足を踏み入れた途端に逃げ帰ってきた、ということでした。
自然の森は、絵のような美しさだけではなく、クモの巣もあれば 地面に這っている虫もいる。また、独特の臭いもある。
そういう生きている森を、あるいは自然を体験したことのない人たちは、絵本から感じていたイメージとはあまりにも違うことに驚くのだそうです。
森の中の片隅で、14ひきの小さなねずみたちが今日も、動き回り、遊び、けんかをし、ごはんを食べている、という生命の尊い営みを感じた時、それは他のすべての生き物や木々の息遣いをもいとおしく受け入れていかれることにつながっていくような気がします。

2021年03月05日