ヘンリーいえをたてる


D.B.ジョンソン 文・絵

今泉吉晴 訳

福音館書店

 

気持ちのよい 春の日 ヘンリーは 家をたてることにしました。

おのをかりてきて 12ほんの木を 切り倒し、丸太をけずって材木にしました。

4月になって ともだちのエマソンさんが 手伝いにきました。

エマソンさんは 「きみの家は 食事をするには 小さいね」と いいました。

ヘンリーは 「ぼくの家は きみが思っているより ずっとおおきいんだよ」と いいました。

そして ともだちを 家のうしろの 豆畑に つれていきました。

「家ができたら ここが ぼくの食堂になるんだよ」と ヘンリーはいいました。

5月になって ヘンリーは古い小屋を買い、小屋をばらばらにして 窓や板を運びました。

ともだちのオルコットさんがやってきて、「きみの家は 本を読むには 暗いね」といいました。

ヘンリーはともだちを家のわきの ひあたりのよい 草原につれていって「家ができたらここがぼくの図書室になるんだよ」といいました。

ともだちのリディアさんもやってきて「あなたの家はダンスをするにはせまいわね」といいますと、池につづく道のある家の前につれていきました。

「家ができたらここがダンスのできる客間になるんだよ」といいました。

7月に、ヘンリーは新しい家に引っ越しました。

そして、豆畑の食堂で食事をし、草の図書室で本を読み、家の前の道をダンスしながら池におりました。

ヘンリーは「ぼくの家はちいさくても森や池につながっているからとっても広いんだ。」ぼくにぴったりの家なんだよといいました。


この絵本は2004年4月に出版された新しい絵本です。
最初にこの本を読んだ時は何気なく読んだのですが、本を置いてしばらくたってから「この本はいったい何なんだろう」という、いわゆる「気になる本」であったことに気が付きました。
私たちの家に寄せる思いと、このヘンリーの自由なそして自然との融合としての家観の違いにショックをうけます。

これはすなわち人生観そのもののような気がしますし、自分自身に大事なことは何かをつきつけられているような思いになります。
私たちは、何でも自分の物を自分の領分の中にとりこみたいと思いますし、すべてのことをその領分の中ですまそうとしますが、ヘンリーは枠組みの中にとどまるのではなく、(枠組みがないに等しい)自分を外に外にと押し出していきます。そしてすべての恵みを享受し喜ぶのです。
2003年には「ヘンリーフィッチバーグへいく」というシリーズ最初の本が出ていますが、それとあわせて読んでみるとそのヘンリーの姿がより明確に受け止められます。
子どもにとっては、楽しいゆったりとしたヘンリーのファンになるような愉快な物語でしょうし、大人にとっても今自分がどこかに置いてきてしまったものを思い出させてくれるような絵本となるでしょう。

2021年03月11日