おなべおなべにえたかな?


こいでやすこ・さく

福音館書店

 

気持のいい春の日。
きつねの「きっこ」と、いたちの「にい」と「ちい」はたんぽぽをつんでやまむこうのきっこの おおばあちゃんのところにでかけました。
おおばあちゃんはスープをことこと煮ながら待っていてくれました。
その時、からすのおかあさんがおおあわてで おおばあちゃんを呼びにきました。
こがらすの のどに骨が刺さっちゃったんですって。
おおばあちゃんは山のお医者さん。急いで こがらすのところに行ってしまいました。
スープの番をしていてね、と きっこに頼んでね。
「おなべおなべにえたかな」とみんなはおなべに聞きました。
するとおなべは「コト コト コト にえたかどうだか食べてみよ コト」とこたえたのでおなべのふたを取ってみると…おいしそうなにんじんスープ! 
味見をしますと、まだかたい。
3度目におなべのふたをとると「うーん おいしい」「もういっぱい」とみんなで味見をしたのでおなべの中はからっぽになってしまいました。
するとおなべが「こげつくからはやくお水を入れてぇ」「お豆も」というのでみんなは急いでお料理を始めました。
おなべのいうとおりに 仕上げにたんぽぽも入れました。
おなべがグツグツいった時おおばあちゃんが帰ってきました。
そしておなべの中を見てびっくり。
「まあ おいしそうな春のスープ!」
みんなでおなかいっぱい食べました。
おなべが「よかったコト コト」っていったんですって。


小出 保子さんの楽しいお話です。
不思議なおなべを囲んで、「きっこ」と「にい」と「ちい」のうきうきとした様子や会話がその表現力豊かな絵とことばによって手に取るように伝わってきます。
おおばあちゃんの作っておいてくれたスープを何回も味見をしながらそのたびに塩を入れたりバターを入れたりしておいしくなっていくスープ。
どんな味になっているのかなとお話に吸い込まれていくようです。
そして、そのスープを全部食べてしまったあと、こんどはおなべが動物の子どもたちにお料理を教えていくのですが、それもとてもおいしそうで お料理や食べることの大好きな子どもたちにはたまらない場面が続きます。
お豆のスープに摘んできたたんぽぽを入れるというところでは思わず春の香りが漂ってくるような気がするのです。
また、おなべと子どもたちのリズム感のあることばの掛け合いの楽しさは生活の中でつい口ずさんでしまうほどです。
共感性、一体感をもって楽しめる絵本です。

2021年03月17日