サンタおじさんの いねむり


ルイーズ・ファチオさく
まえだ みえこ 文

かきもと こうぞう 絵

偕成社

 

寒い北の国。今年もクリスマスイブがやってきました。
サンタおじさんはプレゼントを山のようにトナカイのそりに積んで町の子どもたちのところにでかけました。
このところ毎晩プレゼント作りで眠る時間もあまりなかったサンタおじさんは途中で眠気におそわれました。
そこでおくさんが持たせてくれたコーヒーを飲みました。そしてこれもおくさんが作ってくれたサンドイッチを一口食べました。するともっともっと食べたくなってサンドイッチを全部食べてしまいました。
おなかいっぱいになったサンタおじさんはすっかり眠り込んでしまったからさぁ大変。
今夜中にプレゼントを届けなければクリスマスになりません。
森のきつねがやって来て、サンタおじさんが眠り込んでいるのを見つけました。
起こしましたがサンタのおじさんは夢をみながら気持よさそうにぐっすり眠っています。
疲れているサンタおじさんを起こすのはかわいそう、でも何とか今夜中にプレゼントを渡さなければときつねは考えました。
そして森中のみんなを集めて相談をしました。
「みんなでこのプレゼントを代わりに配ってあげないか。それがぼくたちからサンタおじさんへのクリスマスプレゼントだよ」ということになって、動物たちははりきってプレゼントを持って町に向かいました。
そしてめあての家のえんとつからひとつひとつプレゼントを配っていったのです。
朝、目をさましたサンタおじさんは真っ青になりました。
そりはからっぽです。
サンタおじさんがぽかんとしていると、雪の上に字が書いてあるのに気がつきました。
「メリークリスマス  プレゼントはみんなくばっておきましたよ。もりのどうぶつたち」
サンタおじさんの目に涙が浮かびました。そしてサンタおじさんも雪の上に
「ありがとう。もりのおともだち。  メリークリスマスサンタより」
サンタおじさんはまた、そりに乗っておくさんの待っているあたたかいおうちに帰っていきました。

 

この本のサンタさんはとても人間的で家庭的なあたたかいイメージで描かれています。
サンタおじさんが眠り込んでしまったのを見て「サンタおじさんは疲れているんだな。だけどおじさんがこのままあさまでねむっていたら、こんや、こどもたちのくつしたにクリスマスプレゼントはいれてもらえないよ。」というきつねの他者を思いやる気持、また、みんなでクリスマスの喜びを分かち合うために心を合わせ力を出し合う、ということはクリスマスの喜びそのものです。その意味で、もりの動物たちも、またサンタおじさんも一番尊いクリスマスプレゼントをもらったのではないかと思います。
クリスマスといえばサンタクロース、というようにすっかりイメージが定着していますのに、本当にサンタクロースはいると信じている人はほんの少数です。
特に大人はほとんどがいないと思っている。でもサンタクロースは本当にいるのです。
幼いときにサンタクロースがいることを確信できる子どもは幸せです。サンタクロースは人々の希望と夢と愛の実現化なのですから。目に見えない存在を確信できることは人生を通して宝であり希望と自信をもって生きる根っこになるのです。
人々はサンタクロースのあたたかさをみんな求めています。サンタクロースと考えるだけでわくわくどきどきした子ども時代は貴重です。
平和や幸せを人が求めている限り、サンタクロースはいるのです。
サンタクロースがいていつも自分を知り守り愛していてくれるのだということを信じられる幼児期をぜひ育ててあげてください。

2021年04月06日