おこりじぞう


山口勇子・原作

沼田曜一・語り

四国五郎・絵

金の星社

 

わらった顔して、町のよこちょうにたっていたおじぞうさんは、8月6日原子爆弾をうけ、爆風でふきとばされた。
水をもとめ、にげのびてきたひとりの女の子の目には、そのおじぞうさんが、おかあさんにみえた。
やがて、おじぞうさんは、目をぐっとにらみ、口をぎゅっとむすび、仁王の顔になった。目からあふれた涙が女の子の口もとにながれた…・・。

この絵本は、長年読み継がれたきた作家・山口勇子の「おこりじぞう」を、民話の語り手である、俳優・沼田曜一と、母子像を絵筆に託し続けている画家・四国五郎が、平和を願う心で描き上げた現代の民話です。
と、表紙の裏に書かれています。

この絵本を読むたびにやり場のない憤りと悲しさで胸が詰ります。

幼い子にこの絵本を読んであげることが果して適切かどうか悩みながら、しかし、今、語り伝えていかなければならないのだと思い直して読みます。

読みながらつい声が詰まり、涙があふれてきます。

子どもたちはそんな読み手の通常ではない様子にびっくりしながら、真剣にきいています。

私は、こんなことが2度とあってはならない、こんな思いを子どもたちにさせてはならない、戦争はどんなことがあってもしてはいけないのだ、という思いを伝えたいと願いながら読むのです。

次世代を担う幼子が、戦争のこわさや残酷さを体で感じ、戦争より平和を選ぶ人として大人になってほしいと願っています。

今、世界中が戦争状態かあるいはその危機をはらむ緊迫した状況にあるなかで、今年の夏は特別身につまされてこの本を読んでいます。

2021年04月12日