すてきな三にんぐみ


トミー・アンゲラー・さく

いまえ よしとも・やく

福音館書店

 

泣く子もだまるこわいこわい三人組の泥棒が、ある日小さな女の子と出会ったことで思いがけない転身をする楽しい物語です。
みなしごのステファニーちゃんをひきとった三人の泥棒は、今までためた金銀財宝の使い方を全く考えていなかったことに気づかされます。
そこで三人はさびしく悲しく暗い思いをしているみなしごたちをみんな集め、お城を買って住むことにしました。
どんどんふえる子どもたちは元気に育ち、お城の周りに家を建てて村を作り、3つの塔をたてました。
いつまでもすてきな三人組を忘れないように。


トミー・アンゲラーさんの絵はダイナミックな構成と色使いで一度この本を読んだらきっといつまでも印象深く記憶に残るような気がします。
色は黒が基調でそこにきれいな黄色と赤が映えて鮮やかです。
また、ストーリーも奇想天外で、こわいこわい男三人が小さな女の子と関わることによってそれまでと全く違う人生を生きるようになる、というユーモラスで、そして何となくロマンを感じさせてくれるものです。
作者はこのお話を彼の娘さんに捧げていますが、おとうさんがそのひざの上に小さい娘をのせて、おもしろおかしく話してあげている姿が目に浮かんできます。
このお話は、作者の子どもに対する限りない慈しみと子どもの存在の素晴らしさへの確信が基調になっているように思います。
子どもは何の先入観もなく人に信頼をおくことができます。また、子どものひたむきさは人にこれからのことを前向きに考えさせていく力を与えてくれます。
そのようなパワーに出会った泥棒たちの、戸惑いと喜びが想像できます。そして、それは父親としての作者と娘との出会いのようにも感じられます。
また、いまえ よしたかさんの訳がいいのです。これだけの訳がてきるということは、語学力もさることながら、余程この絵本に思い入れがあったのではないかと思うほどです。
絵とストーリーと言葉がぴったりとあって絶妙なしゃれた小気味よさを作り上げています。

2021年04月16日