かわいそうなぞう

つちや ゆきお ぶん
たけべ もといちろう え
金の星社
戦争が激しくなって、上野動物園の動物たちはライオンもトラもヒョウもクマも大蛇もみんな毒を飲まされて殺されました。もしもアメリカの飛行機が爆弾を落して、動物園の柵をこわしたらこれらのこわい動物が街に飛び出し、人間を襲うかもしれないからです。
この動物園の人気者の像、ジョン、トンキー、ワンリーの3頭も殺されることになりました。
いろいろな方法を試みましたが、なかなかうまくいかず結局えさをやらないで殺すことになりました。
だんだんやせほそっていく象たち。
最後は芸当をしながら死んでいきます。
飼育係の人は胸もはりさけそうになって叫びます。
「戦争をやめろ」「戦争をやめてくれ」と。
8月、敗戦記念日がやってきます。
その戦争を体験した方たちはだんだん少なくなっていきますが、世界ではまた新しい戦争が次々に勃発しています。
戦争は悲惨で残酷です。人間を人間でなくしてしまう恐ろしい犯罪です。
そんな恐ろしいことを子どもに教えられません、という思いをもつ方もおられますが、理屈や正当化するに値しない戦争という出来事を、単純明快に決してやってはいけないこととして伝えていくことが教育の真の意味なのだろうと思います。
この絵本は、子どもたちの大好きな象が戦争によってどんなつらい最後を迎えなければならなかったのかを語っています。
何度読んでも涙がでます。そして、聴く子どもたちも心をふるわせています。
そして、いとしい生命を大切にできる世界を創っていかなければと思うのです。