もりのなか


マリー・ホール・エッツ ぶん/え

まさき るりこ やく

福音館書店

 

「ぼく」は紙の帽子をかぶり,新しいラッパをもって森にさんぽにでかけました。
すると、森の動物が次々にぼくのさんぽについてきて長い行列ができました。
 ライオンもいます。二匹のぞうのこどもも、二匹の大きな茶色のくまも、かんがるーのおやこも、こうのとりも、それにおさるやうさぎまで。
 ぼくがふくラッパのあとについてみんなでぎょうれつをしてさんぽしたあと、おやつを食べていっぱい遊びました。
 でも、かくれんぼをしてぼくがおにになって,目をあけると、もうもりのどこにもどうぶつたちは見えませんでした。
 そのかわりに、そこにはぼくのおとうさんがいました。ぼくを迎えにきてくれたのです。ぼくはおとうさんのかたぐるまにのって、かえっていきました。

 1963年に初版本がでてからおよそ40年、この絵本は何代にもわたって読み継がれています。子どもが、その育ちの過程でのある時にしかもちえない、ファンタジーの世界に遊ぶ姿を見事に表現していています。
 森というのは絵本のなかによく出てきますが、これは心を表現しているのだと云われます。子どもは現実の生活と,空想や想像の世界を分断しないで持ち合わせることができ、それらを行ったり来たりしながら心を豊かに育んでいきます。
 この絵本のなかではそれを支えるおとうさんの存在やかかわりも重要なこととして見事に描かれています。
私はいつまでもこの「ぼく」の心の世界が分かり一緒に遊べる大人でありたいと願いつつこの本を読みます。
 1969年には「また もりへ」という続編が出ています。
これもまた、深みのある素晴らしい本だと思います。

2021年04月28日