しずくのぼうけん

マリア・テルリコフスカ さく
うちだ りさこ やく
ボフダン・ブテンコ え
福音館書店
村のおばさんのばけつからびしゃんと飛び出したひとりぽっちのしずくの冒険のお話です。
しずくが人間の世界から抜け出して、おひさまにてらされやせていき、くろくもに吸い上げられて、また雨のしずくになって地面に逆戻り。
岩の割れ目に落ちたしずくはがちがちに凍り、岩をこなごなに砕いていばっていたら、おひさまに照らされてまたしずくは水にもどり、こんとは小川から大きな川に流れて、やがてグングン強い力に吸い込まれ、ひっこり顔を出したのは台所の蛇口。
洗濯ものと一緒に干されてまた、蒸気になって外に出たしずくは仲間と一緒になって、大きな大きなつららになった。
「はるがくれば つららがとけて しずくはげんきにとびだすだろう
それからきっともういちど ぼうけんのたびにでるだろう」
雨の日、子どもがじっとそして、いつまでも雨を見上げていることがあります。
たくさんの雨のしずくのなかの、たったひとつのしずくの冒険を心に思い描いて自分も一緒に冒険をしているのかもしれません。
身近にある水のしずくが、壮大な冒険の旅をするというこのお話は、そんな子どもたちの夢を一層リアルに誘ってくれます。
大きな自然の営みを身近な生活に引き寄せて楽しくものがたっているので、興味をひきつけられているうちに、水道から出てくる水に親近感をもったり、どうやって水が出てくるのかという子どもがもつ素朴な不思議に対する納得がしらずしらずのうちにできたりもいたします。
うちだりさこさんの訳もリズムがあって、読んでもらうのが楽しい絵本。
雨の日にお子さんとご一緒にいかがですか。