はじめてのおるすばん

しみず みちを・作
山本まつ子・絵
岩崎書店
みっつになるみほちゃんは初めておるすばんをすることになりました。ママがいなくなると部屋の中が急にシーンとして「ママ、早くかえってきて」と、思い始めた時、「ぴん・ぽーん」どんどんどん。「こづつみでーす」とゆうびんやさん。「こづつみいりましぇん」。
郵便やさんが帰ったと思ったら今度は新聞屋さんが訪ねてきました。こわくて泣き出しそうになったその時、「み・ほ・ちゃーん」とチャイムがなってママが帰って来ました。
「ママだっ」みほちゃんは玄関にむかってかけだしていきました。
生まれて初めて一人きりになる、ということがどんなことなのかを今年みっつになるみほちゃんのお留守番をとおして豊かに表現されています。子どもにとっていつも一緒にいるおかあさんがいなくなるということは何から何まで不安なことばかりです。お母さんがいてくれればうれしいはずのお客様もこわいこわい存在になってしまうのです。
短い時間もとても長く感じられ、まるでこの状態が永遠に続くかのように心細くなります。お母さんがいないと自分が自分でないような不安の海に投げ出されてしまうのです。
入園当初、お母さんと離された子が泣き叫んだり、暴れたりしてその小さい体いっぱいで不安を訴えますが、まさにこの状態なのだと思います。
そんな子どもの当たり前の心情を、そのまま受け止める保育者でありたいなと思います。
子どもにとってお母さんの存在はすべてなのてす。
今、ひとりきりになっても、お母さんと離れても、そして子どもをひとりにしても何の抵抗も感情もない親子が多いのではないかと気がかりになります。