とんことり


筒井頼子 さく

林 明子 え

福音館書店

 

山の見える町にひっこしてきた<かなえ>が引越しの荷物の整理をしていると、玄関で小さな音がしました。
玄関に急いでいってみると、郵便受けの下にすみれの花束がおちていました。
ドアを開けて見ましたがだれもいません。
次の日もまた音がして、こんどはたんぽぽが郵便受けにはさんでありました。
誰が届けてくれたんだろう。
次の日、とんことりとまたあの音がしてとんでいってみると、郵便受けに手紙がとどいていました。
わたしにきた手紙だ。
でもだれなんだろう。
そして、またとんことりと音がした時、<かなえ>は大きな声で「待って!」と叫んで外に飛び出しました。
<かなえ>はとんことりの主に会えたでしょうか。

知らない土地に引っ越してきた不安、お友だちのいない寂しさ、心細さ、そしてそんな子どもが、届く素敵なプレゼントに次第に心を開き期待をふくらませていく姿がスリル感とあいまって見事に伝わってきます。
子どもが友だちを得ていく過程を丁寧に描いていて子どもの心を忘れかけている大人にもなんとなくなつかしく、そして新鮮さをもって共感できる絵本です。

2021年10月05日