ちいさなあかいにわとり

アイルランドの昔話
大塚 勇三 再話  日紫喜 洋子 絵
福音館書店

 

森の中の小さな家に小ネコと小ネズミと小さな赤いニワトリが住んでいました。ところがかまどに火をつけるのも、掃除をするのも、朝ごはんを作るのも全部ニワトリの仕事。

ネコもネズミも何もしません。そこにキツネがやってきて、ニワトリもネコもネズミもみんな捕まえると袋に入れてしまいました。その袋をかついで家に帰る途中、疲れたキツネは一眠り。そこで、この時こそはニワトリ、ネコ、ネズミはみんなで力を合わせ、袋をハサミで切ると外に飛び出し石を詰め込み糸で縫うと家に飛んで帰りました。そんなこととは知らないキツネは家に帰り、大変な目にあいましたって。どんな目か?そこがケッサク。ぜひ読んでみて。

☆アイルランドでは、19世紀末からのアイルランドの文化復興運動がおこって民話の収集が盛んに行われてきたとのこと。民話というものがその民族の歴史や風習や文化を支える力をもっているということを改めて感じると共に、民話が民族のルーツを誇りをもって伝承していくことができる貴重な財産であることを思わされます。そしてそれらが残されていることで私たちは今、アイルランドだけでなく、ヨーロッパやアフリカ、アジアなどの他の国々でも伝えられてきたたくさんの民話を絵本などで紹介されてその国独自の文化にふれることができます。

この絵本もとてもユーモアのあるおもしろい昔話で、ニンマリしながら読み進み、最後は抱腹絶倒です。ニワトリたちの表情や動きも実際に生きているかのように自由自在に描かれていて、まるで動いている動画のように感じられます。大人が読んでおもしろいお話。でも昔話って大人も子どもも区別なく楽しめるものですよね。いろいろな教訓や教えがあったとしてもそれはまたの機会として、今回楽しく読んでみてください。これは福音館の月刊こどものとも年中版7月号です。値段税込み420円、本屋さんで売っています。

2020年06月09日