ちいさなてんしのおくりもの


アリスン・マギー 文
ピーター・レイノルズ 絵
堀口 順子 訳
ドン・ボスコ社

 

天国新聞で「救い主が生まれるよ」という記事を読んだ天国の天使たちは大喜び。

小さな天使のアステルも赤ちゃんに何か贈り物をしたいと思いました。

どんな贈り物をしたら喜んでもらえるでしょう。

赤ちゃんを喜ばせそうな「風」も「雨」も「音楽」もすでに空や雲や小鳥たちが用意をしていました。

何もぴったりなものが見つからず途方にくれたアステルは広くて真っ暗な夜空の中で下をのぞき込んでいました。

すると、救い主に贈り物を持って長い旅をしてきた博士たちが暗い道に迷っているのが見えました。

その時、アステルは赤ちゃんに何をあげたらいいかが見つかったのです。

アステルは目を閉じると羽をおどらせ夜空へ舞い降りていきました。

そしてここだというところまでとんでくると、きらきらと輝く星になりました。

その星は、その夜空に明るく輝やき、博士たちの目印となって救い主の赤ちゃんが生まれた小屋に導きました。

それだけではありません、暗闇の中の光、それは一番の贈り物となって赤ちゃんの目にも明るく届いたのです。

 

☆このお話は新約聖書マタイによる福音書第2章1節から12節に書かれている「占星術の学者たちが訪れる」(新共同訳)の記事をベースにしていると思われます。東方で救い主が生まれるという印の星を見て贈り物をもって長い旅に出た占星術の博士たちをその星が先導し救い主にまみえさせたという記事です。

この絵本は、その記事を小さな天使という存在を通して実に軽やかに、そして素朴に、純粋に描き、救い主の誕生の喜びを表現しています。そして実際に記事の中で書かれている「星」が、実は小さい天使のプレゼントだったのだということに驚きと感動を感じてしまいます。読者の思いを遥かに超えた物語の展開です。

絵はとてもモダンで、躍動感があり、2000年前の博士たちの場面と同時に描くことによって時代を超越して神の子の誕生という真実を伝えようとしているようにも思えます。

イエス・キリストの誕生に関してはたくさんの不思議な出来事が2000年以上、語り継がれたくさんの人々に信じられてきました。そしてそれらの神の子の誕生という出来事をさまざまな視点や立場でとらえながらたくさんの物語や文学や芸術が生まれ、その神秘的で恵みに満ちた表現は人々に目に見えない神様の偉大なる愛や恵みを具象化して伝える役目を果たしてきました。 この絵本もクリスマス物語の素敵なお話として子どもたちにきっと夢を与えてくれることと思います。

クリスマスが近づいている今、この小さい天使のように何が赤ちゃんイエスさまに一番喜んでもらえる贈り物なのかを私も考えさせられています。なかなか思いつきません。でもイエスさまが暗闇を照らす光となってこの世に生まれてくださったことを喜び、せめて自分の心の中にその光を迎え入れることができるよう心を整えてクリスマスを待ちたいと思います。

2020年06月20日