てのひらおんどけい


浜口哲一ぶん  杉田比呂美え
福音館書店

 

ぼくはパパとおさんぽにでかける。

パパと手をつなぐと、パパの手あったかい。

影になっているところのフェンスは冷たいな。

ひなたのフェンスはあったかい。ふしぎだな。

いろいろなところにさわってみたよ。

あったかい。つめたい。あつい。つめたい。

公園の砂場であそぼ。砂山はあったいけれど、穴の中はつめたいよ。

あったかくてつめたくて、あぁいそがしかった。

ただいま。

こんどはママも一緒にいこうね。

 

☆この絵本は福音館から月刊誌「ちいさなかがくのとも」として2003年に発行配本され、2009年に「幼児絵本ふしぎなたねシリーズ」として発行されました。

小さい子どもたちが、身近な生活の中で、「ふしぎだな」「おもしろいな」と思う体験や事象をとりあげて、子どもの科学する心に小さな種としてポトンと落とす、子どもの科学する目の発露として提示するという(これは私の私見ですが)福音館の「かがくのとも」がまず1969年月刊科学絵本として生まれ、更にもっと小さい人を対象にして「ちいさなかがくのとも」が誕生してこの8月の「はっぱきらきら」で161号になっています。

生活の中のささやかな事に焦点を当ててそれを掘り下げたり広げたりしていくのですが、それが大人が見てもおもしろいものが多く、人気者の月刊誌です。

その中でこの「てのひらおんどけい」は、その妙を見事に言い当てています。

日常生活の中で何げないこと、通り過ぎてしまうこと、「ここはあったかい」「これはつめたい」という発見と探検は子どもの興味関心を生まれさせ「おもしろい」現象に気づかせます。幼稚園では子どもたちが飽きもせず、繰り返してゲーム感覚で遊びます。影の下の土はつめたいけれど、お日様に当たっているところはあついとか。誰ちゃんの手と私の手はどっちが冷たいとか、先生の手で包んでもらったらあったかくなったとか。

この絵本ではパパとぼくがお散歩に行くという中で場面が展開していきます。

大好きな人と一緒にリラックスして生活する中で、何げなくみえるちょっとした気づきが、ゆったりとした時間空間の中で興味関心につながりおもしろい活動として「子どもの遊び」そのものになっていく過程がよく見えます。

大人が恣意的に科学を教えよう、研究をさせようという前に、生活の中のおもしろいこと不思議なことに一緒に寄り添い共感性をもって楽しめるゆとりをもてたら子どもたちの科学する目が自然に生まれ育つのではないかと思います。

そしてそれは科学する目だけでなく子どものすべての育ちにとって一番のベースになることなのではないかと思います

2020年06月24日