おつきさま こっちむいて


片山 令子ぶん  片山 健え
福音館書店

 

ほそいほそいおつきさま。

ひこうきを見ているおつきさま。

ぼくのあとをずっとついてくるおつきさま。

雲にかくれるおつきさま。

ひるまなのに見えてるおつきさま。

電線のつなわたり、かくれんぼをするおつきさま。

おつきさまって空に電気がついたみたいに明るいね。

おつきさま、おやすみなさい。

 

☆この絵本は幼児絵本ふしぎなたねシリーズの一冊です。

「ぼく」がお買い物にいった街の中から、犬の散歩をしながら、また、おかあさんの自転車の荷台から、家の窓から「おつきさま」を見つけて語りかけているお話です。

お月様のさまざまな形や色や明るさがそのたびに変わり、それをどんな状況で眺めているのかが生活観を伴って丁寧に描かれています。「ぼく」の子どもらしい感性の表現も実感があります。これはきっと片山ご夫妻の生活がそのまま「ぼく」を通して語られているのだと思います。

今年は9月27日が中秋の名月、翌日はスーパームーンということで、いつもより「月」の存在がクローズアップされたように思います。

年長組でお昼ご飯を食べながら子どもたちの会話を聞いていると「私、ゆうべお月様見たよ」「私も。スーパームーンだったんだよね」「何?それ」「お月様が大きくなるんだよ」「ふーん」「お月様の中にウサギが見えるんだよね」「あぁ見た、見た」。

子どもたちがお月様の話をしているのを聞くことはあまりなかったので、とても興味津々に聞いていました。キャンプに行った時、みんなで夜空を見上げて月や星を見たことはありましたが、日常的には子どもたちの生活の中で実感を伴った月の話題にはあまりなりません。話をしていた年長児に「どこでそのお月様をみたの?」ときいてみましたら「おとうさんがね、ベランダをあけて見せてくれたの」といいました。きっとお父さんはスーパームーンを子どもに見せてあげたくてベランダに誘ったのでしょうね。

今 子どもが夜、窓からじっと外の暗い空を見上げていたり、散歩にでかけたりなんて、あまり聞きませんね。生活が忙しすぎるのでしょうか。また街は昼のように明るくて、お月様がかすんでしまいそう。

この本の中の「ぼく」は、お月様と生活の中でたくさん出会い、対話をしています。

子どもたちの世界観の中に、テレビ画面や写真やお話だけのお月様ではなく、いつも自分を見ているような月の存在を身近かに感じられる生活があったらいいなと思います。

2020年07月09日