ぶどう畑のアオさん


馬場 のぼる

こぐま社

 

 アオさんは、森のなかで くらしていました。

そこは みどりが いっぱい。

森は どこまでも ひろがっていて、

おくのほうには みずうみも あります。

 アオさんは、その森が とても きにいっていました。

 ある日、アオさんは、ゆめを みました。

 ゆめのなかで、アオさんは、

森のこみちを さんぽしていました。

「きょうも、いいてんきだなあ」

 ぽっくり ぽっくり あるいていくと、

森が おわって、はらっぱに でました。

「ああ、こんなところに でぐちが あったのか……」

 ひろいはらっぱの むこうに、ちいさなおかが みえます。

「なんだか、いいにおいが するぞ……。あのおかの うえかな」

 おかに のぼって みると、

そこは ぶどう畑でした。

「わあっ、ぶどうが いっぱいだー」

 アオさんは、うれしくなって、

ぴょーんと とびはねました。

 で、とびはねた ひょうしに、ゆめから さめたのです。

「あ、……」

 アオさんは、がっかり。

「あー、おいしそうな ぶどうだったのになあー」

 アオさんは、とびはねなければ よかったと、おもいました。

 それから アオさんは、ゆめのとおりに、

いってみようと おもったのです。

「このみちだ。ここを あるいて いったんだよ」

 アオさんは、森のこみちを、

どんどん あるいていきました。

 森が おわると、ゆめのとおり、はらっぱが ありました。

「やあ、アオさん どこへ いくの」

「やあ、ネコさん。

ぼくね、ゆめで みた ぶどう畑へ いくんだ」

「へえー、ゆめで みた……。

そりゃ おもしろい、ぼくも つれてって」

 ネコは、そういうと、アオさんのせなかに

ぴょんと もう、とびのっていました。

 アオさんは、ネコを のせて いきました。

 

『11ぴきのねこ』で有名な馬場のぼるさんの絵本です。

この絵本のアオさんはとことんマイペースな馬です。その何事に対しても超然、泰然とした姿は神々しささえ感じてしまう、と言ったら言い過ぎでしょうか。ナンセンスでユーモア溢れるお話の中で、自分らしくいること、みんなで楽しく生きるとはどういうことかを教えてくれている気がします。いえ、きっとアオさんは何も考えずただ絵本の中でぶどうを食べているだけなんでしょうけれどね(笑)

今年は午年。アオさんを少しでも見習って、動じることなく、自らを見失うことなく、みんなで仲良く楽しい年にしたいものです。

2020年07月27日