つきのせかい


フランクリン・M・ブランリー ぶん
ブラディミール・ボブリ え
山田大介 やく

福音館書店

 

 ゆうべはつきをみましたか。

 おおきくてまるいつきでしたか。

 つきがまるいとき、つきでうさぎがもちつきしているようだとよくいわれます。

 つきにはくらいところやあかるいところがあるので、ちょうどそのようにみえるのでしょう。

 こんどつきがまんまるいとき、じっとみてごらんなさい。

 つきはとてもとおいけどとてもよくみえます。

 つきがボールのようにまるいことがわかるでしょう。

 つきには、あかるくひかるところやくらいところがあります。あかるくみえるところには、ふんかこうがたくさんあります。くらくみえるところはうみです。

 つきにいってみたとしましょう。
つきのうえはどんなふうになっているでしょうか。

 つきにはくうきがありません。
くうきがないとにんげんはしんでしまいます。
だからつきではうちゅうふくをきなければなりません。

 うちゅうふくのなかにはくうきがはいっています。

 つきではひのあたるところはとてもあついのです。
でもうちゅうふくをきていればあつくありません。

 ひかげにはいると、こんどはひどくさむくなります。
でもうちゅうふくをきていればさむくありません。

……

 にんげんがつきにいけば、やまやふかいわれめやふんかこうやうみをじぶんでたんけんすることができます。
 つきにいってたんけんすることをかんがえると、むねがわくわくしますね。
 きみもいつかつきのせかいにいけるかもしれませんよ。


☆福音館書店の科学絵本の一冊です。
暑かった夏も過ぎ、だいぶ涼しくなってくるとなんとなく空を見上げる余裕も生まれてくるのでしょうか。古来から人々は、夜空に浮かぶ月を見て想いを馳せ、宴を催し、歌を詠い、秋の感傷に浸ってきました。
9月、10月(旧暦の8月)になりますと「中秋の名月」と呼ばれる八月十五夜がきますね。今年(2013年)は9月19日です。
数年前には探査機はやぶさが戻ってきたり、つい先日もイプシロンロケットを発射するなど宇宙への夢や希望が膨らむ話が次々と伝わってくる現在ですが、そんな宇宙関連の出来事として大きく残る一つにアメリカのNASAによるアポロ計画、人類初の有人宇宙船による月の探索を挙げることに異論はないでしょう。
古来から見上げ続けてきた近くて遠い星である月へ人が降り立つ、ということは人類にとって科学的にも精神的にも非常に意義深く、当時遠い地上でじっとテレビを見つめる人々にとっても興奮する一瞬だったことでしょう。
その瞬間はご存じの通り1969年、アポロ11号によってもたらされるわけですが、この絵本が日本で最初に発刊されたのはその前年、1968年のことでした。今この絵本を読んでもその当時の人々が持っていたアポロ計画への興奮、希望が伝わってくるようです。また、科学絵本として当時として知りうる宇宙のことや月の様子をわかりやすく伝えてくれています。この絵本を読んだ子どもたちは胸の内で想像や夢が宇宙に届くほど膨らんだことでしょう。絵本の最後の一文がまたすばらしいですよね。
「きみもいつかつきのせかいにいけるかもしれませんね」
そう言われて希望が膨らまない子どもはいなかったことでしょう。
もちろん今読んでも非常に楽しく、宇宙への夢が広がる絵本なのはまちがいありません。
また、この絵本の絵がモノクロトーン調で、今風の言い方をすればとてもクール。60年代のグラフィックの特徴の一つだったのでしょうが、今見てもとてもセンス良くかっこいいのです。この絵だけでも大人も非常に楽しめること請け合いです。
ちなみに園にある「初版本」の表紙は、冒頭に載せた表紙の写真とはちょっとだけ違っていまして、「つきのせかい」のフォント(字形)がもっとかっこいいのです(なぜ変えてしまったのでしょうか?)。
個人的にはこの絵本は科学絵本の名作です。秋の夜長に、枕元でお子さんに読んであげれば目を輝かせて聞いてくれると思いますよ。

2020年07月31日