かなえちゃんへーおとうさんからのてがみー


原田宗典 ぶん
西巻茅子 え

福音館書店

 

かなえちゃんへ。

こういうふうにいうと
キミはおこっちゃうかもしれないけど、

キミはまだまだチビだ。

からだもこころもチビだ。
だから

いっぺんにいろんなことをしようとしちゃいけない。

なんでもいいから、だいすきなことをひとつ、

キミはみつけるべきだ。それは、

すなばのよこっちょにさいてる、はなかもしれない。

いけのコイかもしれない。

せんせいかもしれない。

おともだちかもしれない。

とにかくキミがじぶんでみつけるんだ。

がんばってね。


☆6月には世界の多くの国で「父の日」があります。
1909年、アメリカのワシントン州に住んでいたソノラ・スマート・ドッドさんが、男手1つで自分を育ててくれた父を讃えて、教会の牧師に父の誕生月である6月に礼拝をしてもらったことがきっかけと言われています。
その後「母の日」という日が新たに認知されていることを教会の説教で聞いていた彼女は、「父の日」もあるべきだと考え「母の日のように父と神に感謝する日を」と牧師協会へ嘆願したところ、6月第三日曜日が「父の日」と制定され、後々世界中に広まっていきました。

この絵本は、小説家である原田宗典さんが、娘にあてた父親の思いを綴る形で書かれています。
母親と子どもとの関わりを描いた数ある絵本と比べますと、一見、ただの励ましのような、説教のような、突き放しているような、そんな印象を受けるかもしれません。またそれもあながち間違いとも言えないでしょう。
ですが、父親という存在、父親の愛情というものは母親のそれとはまた違っていいのではないでしょうか。
抱え込み庇護することが母性的な愛情であるとすれば、社会の中で我が子が生きていけるようにするのが父性的な愛情といえるかもしれません。
それは愛情としてどちらの方が優れている・劣っている、暖かい・冷たいということではなく、我が子を思い、慈しみ育てる気持ちには変わりありません。
そして子どもの成長にとってはどちらも必要な愛情なのです。
そんな目線でこの絵本を読んでいただければ、きっと原田さんの、お父さんの深い愛情が伝わってくるのではないでしょうか。
小さい子には少し難しいことが綴られていますが、この絵本の言葉は、子どもたちにも何かしら感じることがあるように思います。
また、今すぐは何もわからなくとも、心の隅に残って、いつか思い出してほしい気がします。
短くも、西巻さんのかわいらしい絵と一緒に、説教のような文言とは裏腹に楽しく読めると思いますよ。
できればお父さんが、子どもに読んであげてほしい一冊です。

この絵本のように、お父さんの愛情は表面的にはわかりにくいものかもしれませんね。
でもお父さんの子どもに対する愛情はお母さんに負けていないことでしょう。
この絵本の父性的な愛情を感じつつ、父の日の「感謝」をしたいと思います。

2020年08月05日