かえるのつなひき


儀間比呂志 さく・え

福音館書店

 

かーまかーまむかし、おきなわじまにあったはなし。
あがりむらのたんぼのいねにわるいむしがわいたと。
ほっておいたらむしはしまじゅうのたんぼにひろがりかねんありさまだった。
そのことをしんぱいしたおうさまは、
「はやくむらぜんたいのいねをやきはらえ!」と、むらびとたちにめいれいしたのよ。
むごいむごい!といってもおうさまのめいれいだ。
「あすはみんなでひをつけよう」

さあ、それをきいてたましぬかしたのはおなじむらにすむかえるたちよ。
「にんげんはくいもんがなくなったら、きっとおれたちをとってくう!」
「ちゃすがやー」
「ちゃすがやー」
それで、としよりのものしりがえるのところへそうだんにいくと、
「あぜみちでおまつりさわぎをすればよい。むしはおどろいてみずにおちてしぬだろう。それにはつなひきがいちばんだ」


と始まる、沖縄出身の版画家、絵本作家の儀間比呂志さんの作品です。
沖縄は芸能の島といわれるだけのことはあり、みんなお祭り好き。旗を立て、太鼓をうち鳴らしながら様々な行事が行われます。
綱引きもそんな中で欠かせない行事の一つです。
沖縄の綱引きは一本のつなを引き合うのではなく、雄綱と雌綱の二本を連結して引かれます。もともとは農耕儀礼として雨乞いや害虫除けをし、次の年の豊作祈願のために農事の区切りとなる旧暦6月から8月に多く行われました。今でも大小様々な綱引きが島の各地で行われています。那覇の大綱引きは綱の長さ(200m)が世界一なんですよ!
そんな沖縄の綱引きの様子を、かえるたちのユーモラスなお話に仕立てて楽しませてくれている絵本です。
この絵本が描かれたのは1967年だそうですが、半世紀近くになる現在(2012年)でも綱引き自体の様子はほとんど変わらず人々が楽しんでいるのが沖縄の伝統文化のすばらしさでしょう。
文化と言えば、沖縄は言葉も独特です。うちなーぐち、とも言われますが、沖縄の方言がこの絵本にもちょこちょこと出てきます。また「~よ」「~さ」というような独特な語尾とアクセントも沖縄の言葉がわからない人にはちょっと難しく感じるかもしれませんね。
でもそこは、なんとなく、でいいのだと思います。意味がわからなくても文章の前後や中身から推察して「こんな意味かな」とこどもと一緒に考えてみるのもまた楽しいのではないでしょうか。

先日も幼稚園ではスポーツディにみんなで綱引きができました。子ども同士も大人同士も、とにかく一生懸命、意地になって綱を引っ張ります。勝つと飛び上がるほど嬉しく、負けると「もう一回」と言うほどくやしいのは、なぜなんでしょうね。
大勢の人間がみんなで息を合わせ、全身を使って相手と争う楽しさが単純に短時間で味わえるからなのかもしれません。また、それを見ている人も思わず汗を握って応援してしまう魅力が綱引きにはあります。

みんなで力を合わせることの魅力と沖縄のどこか陽気な雰囲気が、躍動感に満ちたかえるたちから伝わる絵本です。

2020年08月17日