ブルブルさんのあかいじどうしゃ


平山暉彦 作
福音館書店

 

ブルブルさんとあいぼうのねこのドミニック

きょうはうみへドライブです

ブルンブルンブルブルブルブル…

さあ しゅっぱーつ

ブルブルブルブル…

まちをぬけて、

ブルブルブルブル…

のはらをこえて、

ブルブルブルブル…

はしをわたって、

ブルブルブルブル…

あめだ!

ドミニックかさにはいって

ブルブルブルブル…

トンネルだ たすかった

ブッルンブッルンブッルン

きついさかみちも

ぐんぐんのぼる

わあ、とおれないぞ

こまったな

バックオーライ

ブルブルブルブル…

あっちのみちをいってみよう

ブルルルルルルルル

ブルブルブルブル…

うみがみえてきたぞ!

ブルブルブルブルブルンプスン

ついたよドミニック

さあおひるにしよう


☆作者の平山暉彦さんは大人向きのクルマのイラスト集も手がけるイラストレーターさんです。
それだけに、この絵本に登場する赤いオープンカー(1928年頃のMGミジェットというイギリスの車と思われます)や小道具が細かく描かれていて、クルマが好きな方なら思わずニヤッとできること請け合いです。
今時の道行くクルマは静かだったり、モーターのようにスムーズな音だったりするものが多いのですが、この絵本に描かれる古いクルマはブルブルブルブル…とどこか鼓動のような音(と振動)を出して走っていきます。
その生き物のようなクルマと躍動感いっぱいの絵、ページをめくるたびに次々に変わる景色を見ていると、オイルの焼ける匂いや羊や牛の農場の匂い、雨の冷たさやトンネルの暗さ、陽の光で暖かくなった潮風やカモメの鳴き声までも肌に感じられるようです。
ちなみに、何十年も昔のクルマというものはいつ何が起こるかわかりません。また今のクルマのように何でも楽ちんで快適というものでもありません。いつどんな理由で止まるかもわからない道具に搭乗者は身を任せ操り、共にその道の先にある目的地を目指して走り到着した時の喜びといったら、到着して当たり前のドライブとは全く違うものでしょう。
ドライブというよりもツーリングと言った方が似つかわしい、短いお話の中で起こるちょっとした冒険がドキドキワクワクの気持ちにさせてくれるお洒落な雰囲気の絵本です。
子どもも大人も難しいことを考えず、まさにオープンカーを走らせているような爽快感の中で一緒に読んで楽しめる一冊です。

2020年08月21日