あむ

小風 さち 作
山口 マオ 絵
福音館書店
黒犬「あむ」のおはなし。
「あむ」はかっちゃんの家の庭に住む犬。
かっちゃんが大好きだ。
一緒に散歩に行く。かっちゃんはいろいろ教えてくれる。
今度、かっちゃんと「海に行こう」って約束した。
でもかっちゃんは、「あむ」をおいてともだちと海に行っちゃった。
「あむ」は「かっちゃん、おれもいく!」と吠えて、跳ねて、ぐるぐるまわった、ひっぱった。
すると お!首輪がとれたぞ。
かっちゃんはどこだ、海って何だ?とどんどん歩く。
かっちゃんが教えてくれたように、たんぼには入らず(たんぼの水路は走ったけど)
踏み切りでは電車が通過するのをじっと待った。
でも落ちてた魚を食べて腹痛だ。
「落ちてるもの食うんじゃない」ってかっちゃんいってたのに。
かっちゃんがいないとさびしい。かっちゃんまって。
その時、聞こえた。「海の音だ!かっちゃんがいる海だ!」
あっ、「あむー、あむー」 かっちゃん、かっちゃんだ。!
☆このおはなしは、小風さちさんと山口マオさんというコンビの新作です。
このお二人は「わにわにシリーズ」の作者たちです。
子どもたちに大人気の「わにわにシリーズ」は4作目の「わにわにとあかわに」をもって一応完結ということらしいですが、新たにこの「あむ」が新シリーズになっていくかもという予感がします。
「わにわに」は版画でしたが今回の「あむ」は絵です。
犬の息が聞こえてきそうな犬らしい犬です。
そして人のように表情豊か。隣の友達みたい。
またまた「かっちゃん」がマオさんにそっくりで、思わず笑ってしまいました。
その「あむ」をより魅力的にしているのが、さちさんの文。
自ら「あむ」になりきっています。
「わにわに」の時に、ワニ園に通ってずっと観ていたとききましたが、今回も「あむ」のそばにずっと一緒にいて観察していたのではないでしょうか。
さちさんは擬音をよく発明していつも楽しいのですが、この「あむ」でもさちさん特有 の感性がことばになって 絵本のなかを飛び回ります。
「あむ」はやはりさちさんとマオさんの世界だと思います。
ちなみに、このものがたりの舞台はマオさんのお家の近所であり「あむ」はマオさんちの実在の犬だそうです。
この絵本は「こどものとも」7月号でデビューいたしました。