そらまめくんとながいながいまめ

なかや みわ 作
小学館
そらまめくんとグリーンピースの兄弟、それにピーナッツくん、さやえんどうさんたちは草むらのなかにへんなものを見つけました。
みんなでひっぱって、ひっぱって、ひっぱって。
「よいしょ よいしょ よいしょ」
ようやくながーいながーい三尺豆のベットがあらわれて、中からころころとたくさんの三尺豆たちが出て来ました。
「何て長いベットなんだろう。でもぼくのベットにはかなわないよ」とそらまめくんがいうと「ふん!おれたちのよりずっと短いじゃないか」と兄さん三尺豆がいいました。
「じゃどっちのベットが素晴らしいかくらべっこしよう!」
そこでまず丘の上から早く下りる競争をしました。
そらまめくんたちは勢いをつけてベットに飛び乗ると風を切って進みます。
速いこと、速いこと。
でも三尺豆たちはのんびりとベットをまるめて、それをぱっと離すと、まぁ滑り台に早変わり。
「おれたちの勝ち!」と大笑い。
次は水たまりを向こう岸までこいで渡る競争。
そらまめくんたちが気持ち良くこいでいると、あらら、三尺豆たちがあっという間に追い抜いていきました。
「おれたちのベットにかなうものなんてないのさ」と三尺豆は勝ち誇っていいました。
その時、おぼれている末っ子三尺豆を見つけたそらまめくんたちは、あわてて逆戻りして
助けました。
そして、ふかふかのベットに寝かせるとみんなでつきっきりで看病しました。
朝、末っ子三尺豆が目をさまして元気にいいました。
「そらまめくんのベットはふわふわで暖かくて気持ちよかったよ」
兄さん三尺豆は「そらまめくんありがとう。きみのベットのおかげだよ。俺もねてみたくなっちゃった」といいました。
その夜、そらまめくんは三尺豆の兄弟をふわふわベットに招待したんですって。
* この絵本は「そらまめくん」シリーズのなかの1冊です。
シリーズの最初である「そらまめくんとべット」は1997年に福音館こどものとも年中版で、「そらまめくんとめだかのこ」は1999年こどものともで出版されました。
そしてこの「そらまめくんとながいながいまめ」は2009年に小学館から出版されています。
このそらまめくんのおはなしは子どもたちにとても人気があります。
どのおはなしも、そらまめくんのベットをめぐってそらまめくんとまわりの仲間とのやりとりや交流が描かれ最後には読み手がホッと幸せな思いになれるような展開をしています。けれどもそらまめくんが最初から決して「いい子」としているのではなく、自分と相手を比べていばったり、誇ったり、かたくなに人を排除したりするのです。
そんな緊張のなかで何かとんでもない事件がおき、まわりの仲間の思いやりややさしさのなかでそらまめくんが自己変革していくという展開になっています。
今回の「ながいながいまめ」も横暴な三尺豆に対抗してそらまめくんも競争心がムラムラとおきてくるというなかで、末っ子三尺豆の危機という事件がおきます。
その事件をきっかけにそれまでの「勝ち負け」から、心を何にむけたらいいのかという変換がおこり、みんなが思いをひとつにすることができるようになります。
仲間たちそれぞれの特徴もよく描かれていて読み手はそらまめくんだけでなく、その時によってピーナッツになってみたりさやえんどうになってみたりしながら自分自身を投影させてみたり、相手の思いを推し量ったりしながら登場人物(登場豆?)に親しみをもてるのも魅力のひとつではないでしょうか。
私は、この作者が描いている登場豆たちを通してあまりにも子どもの姿を見事に言い当てているような気がしてなりません。
さまざまな子どもの心情をよく分かっている方なのではないかと思うのです。