ピッキーとポッキーのかいすいよく


ぶん・あらしやま こうざぶろう
え ・あんざい みずまる

福音館書店

 

夏になったので、うさぎのピッキーとポッキーはいかだに乗って海水浴に行くことにしました。

もぐらのふうちゃんとねずみも一緒です。

川を下っていきながら「やぎの帽子やさん」で、いかだに乗せたクローバーの葉っぱと、ひまわりの帽子をとりかえてもらいました。

「りすのパラソルやさん」で、どんぐりをさといもの葉っぱのパラソルに代えてもらいました。

海の近くになって、いかだに乗せてきた石を、「かにの床屋さん」に水中メガネに代えてもらいました。

さあ海につきました。

みんなで水を掛け合って遊んでいると、ピッキーとポッキーが急にひっくりかえり、ふうちゃんがうきわごとぽーんとほうり出されました。

それはいたずらなタコの仕業でした。

カモメの監視員がピッキーとポッキーを助けに飛んで来てくれました。

トビウオの救助員もふうちゃんを助けに来てくれました。

みんな助けてくれてありがとう。さあごはんにしよう。みんなでお弁当を食べました。

いっぱい遊んでこんどは連絡船に引っ張ってもらってお家に帰ります。

ピッキーとポッキーは「またくるからねー」と、海に向かって手をふりました。


* この絵本は1980年に「福音館のペーパーブック絵本」として発行されました。
その4年前、1976年にはやはり「福音館のペーパーブック絵本」として「ピッキーとポッキー」が発行されています。
この「ピッキーとポッキー」はホームページ2004年の4月に紹介済みですが、このシリーズ(といっても2冊ですが)は、私にとっては何がというではないのですけれど魅力的で子どもたちによく読みました。
この絵本たちは読んでいるうちにとても楽しくなってくるのです。
嵐山光三郎さんの文には、奇想天外なストーリーをそのまま自然に受け入れられるような楽しさと説得力があります。そしてピッキーとポッキーそれにその仲間たちを包み込むようなやさしさとおおらかさ、上質なユーモアがあります。
大人の文章だなと思わせます。
そして、この安西水丸さんの絵の華やかなこと。にぎやかなこと。色もきれい。
私の個人的な好みを福音館さんが知ってか知らずか(きっと知らない)1993年に「ピッキーとポッキー」が、そしてこのたび2010年5月にこの「かいすいよく」が福音館幼児絵本としてハードブックになりました。

このピッキーとポッキーのものがたりは、いってみれば「おまつり」のような要素をふんだんにもった物語だと思います。
「ピッキーとポッキーのかいすいよく」も、目的地に行き着くまでにさまざまな人たちと気持ちよく関わり、事件がおきるとみんなで助け合い、そしてみんなで集まってきてワイワイとお弁当を食べて最後にはハッピーな思いをもって自分の居場所にもどっていくという楽しさ満載のお話です。
登場人物すべてが善意で、それでいてみんな独特のキャラクターをもっていてみんながそれらを認め合い、補完し合っています。
事件をおこしたいたずらのタコでさえみんなでお弁当を一緒に食べて遊んでいます。
そういう「みんなが一緒で楽しいね」という思いがいっぱい詰まったお話なのです。
そして、そのメッセージが教条的ではなく伝わって来るのがいい。
それにしてもいかだを作るという発想、そのいかだに物々交換の品々を載せて、海水浴の準備をしていく、帰りは連絡船に引っ張ってもらう、何て自由で楽しい発想でしょう。
それに登場する一人ひとり(?)の特徴を的確に捕らえてそれをユーモラスに味付けしています。
嵐山さんという作家、どんな楽しいお話の玉手箱を持っているのでしょうか。

2020年09月29日