きんようびはいつも


ダン・ヤッカリーノ 作

青山 南 訳

ほるぷ出版

 

金曜日はいつもパパと一緒に早く家を出る。

街のお店がだんだんあいてくる。

ビルがだんだんできてくるのを見る。

街の人たちと挨拶をしたり、よそ見をしたり、ポストに手紙をいれたりする。

みんな急いでいるけれど、ぼくらは急がない。

そしてお店について、一緒に朝ごはんを食べる。

ぼくらは食べながらゆっくりお話しをする。いろんなことを。

でもそのうちパパは仕事にぼくは学校に行く時間になる。

また、来週の金曜日が待ち遠しい。

ぼくは金曜日が大好きだ。


* この本を描いたダン・ヤッカリーノさんは1965年生まれ。ニューヨークに住んでいます。
私はこの物語を読んだ時、お父さんと子どもの付き合い方の新しい姿を見たように思いました。
都会的、といいますか、現代的といいますか、何かモダンな感じがしたのです。
「お父さん」といいますと、昼は外で仕事、そして子どもとは休みの日に家の中か、もしくは近所の空き地で一緒に遊び、時々車で遠くに連れて行ってくれる、というパターンの父親像が多いなかで、このお話は少し異色です。
朝早くに家を出て、二人でお気に入りのお店で朝食をとる、それも毎週金曜日に。
金曜日に何か外的な要因があって(お母さんがいないとか)その習慣になったというのではなく、絵本を見る限りではお母さんはお家にいて赤ちゃんの世話をしています。
朝ごはんの用意ができないわけではなさそうです。
この習慣が始まったきっかけは分かりませんが、もう長い間この習慣は続いていて、このことを周りの人々も普通に認容しているようです。
何よりも、お父さんもぼくも金曜日の朝のこの習慣がとても大切で、とてもうれしいことなのだとわかります。
朝の街を手をつないでゆっくりと歩きながら、さまざまなものを同じように見、人と挨拶し、お馴染みの店でおしゃべりしながら朝ごはんを食べるお父さんと「ぼく」。
時間がくるまでその時間と空間を楽しみます。
そして時間になると、お互いに仕事と学校に出掛けていきます。
そしてもう来週の金曜日が待ち遠しくなるのです。
こんな父と子の関わりって楽しいと思いませんか。
「よき子育てのためのスキルとしてこんなこともできるよ」ということではなく、人格をもった一人の大人と一人の子ども、あるいは同士的な二人の、二人だけの大切な世界を共有する喜び。
幸せなひとときなんでしょうね。人生って楽しいと思えるんでしょうね。
お父さんも「ぼく」も。
作者のダン・ヤッカリーノさんは息子のマイケルくんと毎週金曜日、実際にこのことをしているのだそうですが、私はもしかしたらダンさん自身がお父さんとこのような体験をしていたのではないか、あるいはお父さんとのそんな時空にあこがれていたのではないかと思うのです。
絵が今のニューヨークというより、一世代前の街のように描かれているように思えることもその要因かもしれません。
「お父さん」の姿は、千差万別。お母さんのようなある一定のイメージにはあてはまらないほど多種多様な部分があります。
それぞれのスタイルでいいのです。子どもと対等に付き合い子どもと一緒に楽しむことのできる素敵なお父さんがたくさんいてほしいなと思います。

2020年10月02日