ベンジーのふねのたび
マーガレット・ブロイ・グレアム 作・絵
わたなべ しげお 訳
福音館書店
ベンジーは耳が長くて尻尾の短い茶色の犬です。
ベンジーは家族と旅行をするのが大好きでした。
でもある夏のこと家族は船旅行をすることになりベンジーはお留守番になりました。
船まで見送りにいったベンジーは、次の日メアリーおばさんと散歩にでかけた時、港に止まっていた家族が乗って行ったのとそっくりの大きな船をみつけて飛び乗りました。
船には家族は乗っていませんでした。
その上、意地悪なネコのジンジャーがいて、ベンジーを追い掛け回すのです。
ところがベンジーがジンジャーから逃れているうちに船は出帆し、海の上へ。
姿が見えれば追い掛け回すジンシャー。でもその姿がみえなくなりまったある日、ベンジーは高いマストから降りられないでいるジンジャーを発見したのです。
ベンジーは航海士に知らせました。そして、無事マストから降ろしてもらってからというものジンジャーはけっしてベンジーを追い掛け回すことはありませんでした。
ベンジーはコックさんや航海士とも仲良くなり、船の旅を楽しみました。
やがて船はもといた港にもどってきました。
ベンジーは、タラップを駆け下り、家にむかって一目散。
家の人たちは、ベンジーがもどってきて大喜び。
「もう決してお留守番なんかさせないよ」といいました。
* 夏になると、私はどうしてもマーガレット・ブロイ・グレアムさんの描く絵本を思いだすのです。
この「ベンジーのふねのたび」もいかにも「夏」という感じがして、毎夏一回は手にとります。そして「うみべのハリー」も。
この2冊、「ベンジー」はグレアムさんですが、「ハリー」はジオンさんが文を書いていて、書き手が違うにもかかわらず、同じトーンを感じます。
気が付かなければ、同じシリーズのようにも感じてしまいます。
これは両書の訳をされたわたなべしげおさんのリズム感あふれる名文もその役を担っていることは明白です。
今回はベンジーをとりあげましたが、海と船という開放的な空間設定と、スリルとスピード感のある物語の展開、そして人とベンジーのやさしい関係性があたたかいタッチの絵と愛情あふれる文で描かれていて絵本としての魅力にあふれています。
30年ほど前に日本に紹介されたこの絵本、毎年夏になるとたくさんの親と子がゆったりとした思いでページを繰っているのではないでしょうか。